司法書士 過去問
令和6年度
問8 (午前の部 問8)
問題文
※商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。
ア 堀の所有者は、対岸の土地が他人の所有に属するときは、当該土地の所有者の承諾を得なければ、当該堀の幅員を変更してはならない。
イ 土地の所有者は、その所有地の水を通過させるに当たり、低地の所有者の承諾を得なければ、当該低地の所有者が設けた工作物を使用することはできない。
ウ 水流地の所有者は、他人が所有する対岸の土地に付着させて堰(せき)を設けたときは、これによって生じた損害に対して償金を支払わなければならない。
エ 土地の所有者は、他の土地に設備を設置しなければ電気の供給を受けることができない場合であっても、当該他の土地の所有者の承諾を得なければ、当該設備を設置することはできない。
オ 土地の所有者が境界付近における障壁の修繕をするために隣地を使用する必要がある場合であっても、隣地上の住家については、その居住者の承諾を得なければ、立ち入ることはできない。
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問題
司法書士試験 令和6年度 問8(午前の部 問8) (訂正依頼・報告はこちら)
※商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。
ア 堀の所有者は、対岸の土地が他人の所有に属するときは、当該土地の所有者の承諾を得なければ、当該堀の幅員を変更してはならない。
イ 土地の所有者は、その所有地の水を通過させるに当たり、低地の所有者の承諾を得なければ、当該低地の所有者が設けた工作物を使用することはできない。
ウ 水流地の所有者は、他人が所有する対岸の土地に付着させて堰(せき)を設けたときは、これによって生じた損害に対して償金を支払わなければならない。
エ 土地の所有者は、他の土地に設備を設置しなければ電気の供給を受けることができない場合であっても、当該他の土地の所有者の承諾を得なければ、当該設備を設置することはできない。
オ 土地の所有者が境界付近における障壁の修繕をするために隣地を使用する必要がある場合であっても、隣地上の住家については、その居住者の承諾を得なければ、立ち入ることはできない。
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この過去問の解説 (3件)
01
相隣関係に関しては、民法第209条~第238条に規定されています。
マイナーな条文も多いですが、まれに出題されるので過去問で問われた範囲は最低限おさえておきましょう。
民法第219条第1項には「溝、堀その他の水流地の所有者は、対岸の土地が他人の所有に属するときは、その水路又は幅員を変更してはならない。」と規定されており、本肢は誤りのように思えます。
しかし民法の基本原則上、所有者の承諾があれば当然に変更可能かと思われますが、それを確定的に論じた先例は今のところありません。
よって、仮に本肢は正しいとしておきます(回答に影響はありません)。
土地の所有者は、その所有地の水を通過させるため、高地又は低地の所有者が設けた工作物を使用することができます(民法221条1項)。
よって、承諾は不要なので、本肢は誤りです。
民法第222条第1項には、「水流地の所有者は、堰を設ける必要がある場合には、対岸の土地が他人の所有に属するときであっても、その堰を対岸に付着させて設けることができる。ただし、これによって生じた損害に対して償金を支払わなければならない。」と規定されています。
よって、本肢は正しいです。
民法第213条の2第1項には、「土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付(以下、「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。」と規定されています。
よって、承諾は不要なので、本肢は誤りです。
民法第209条第1項には、「土地の所有者は、次に掲げる目的(障壁の修繕など)のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。」と規定されています。
よって、本肢は正しいです。
以下の2点のみで解ける問題でした。
よく確認しておきましょう。
・電気やガス等の給付を受けるために必要な場合は、他の土地の所有者の承諾がなくとも、他の土地に設備を設置し、又は他の土地に設置された設備を使うことができる(ただし、通知や償金の支払いは必要)。
・障壁や建物等の築造、収去、修繕等の目的に必要な範囲であれば隣地を使用することができる(ただし、通知や償金の支払いは必要/隣地上の他人の住家に立ち入るには承諾が必要)。
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02
相隣関係については、①隣地使用権、②囲繞地通行権、③ライフラインの設備の設置権、④水流に関する相隣関係、⑤竹木に関する相隣関係などがあります。それぞれ整理しておきましょう。
ア 民法219条1項において「溝、堀その他の水流地の所有者は、対岸の土地が他人の所有に属するときは、その水路又は幅員を変更してはならない」と規定しており、勝手に変更することは許されないため、本肢は正しいです。
イ 「土地の所有者は、その所有地の水を通過させるため、高地又は低地の所有者が設けた工作物を使用することができる」(民法221条1項)としており、「承諾を得なければならない」というような規定はないため、本肢は誤りです。
なお、これにより、他人の工作物を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、工作物の設置及び保存の費用を分担しなければなりません(同条2項)。
ウ 水流地の所有者は、堰を設ける必要がある場合には他人が所有する対岸の土地に付着させて設けることができます(民法222条1項)が、これによって生じた損害に対して償金を支払わなければなリません(同条1項但書)。
よって、本肢は正しいです。
エ 電気、ガス又は水道などのライフラインの設備の設置においては、他の土地に設備を設置しなければ電気の供給を受けることができない場合には、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければなりません(民法213条の2の3項)。「承諾を得なければならない」とする本肢は誤りです。
なお、他の土地に設備を設置する者は、その土地の損賠に対して償金を支払わなければなりません(同条5項)。
オ 土地の所有者は、境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕のために必要な範囲内で、隣地を使用することができる(民法209条1項1号)としており、この場合には、その居住者の承諾を得なければ、立ち入ることはできない(同条1項但書)としています。
よって、本肢は正しいです。
水流及び竹木に関する相隣関係については、他人に迷惑をかけないようにすることが前提のため、比較的理解しやすいと思います。
また、ライフラインの設備の設置においては、「承諾」ではなく「あらかじめ通知」が必要なことに注意しましょう。
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03
相隣関係に関する問題となります。
ア 堀の所有者は、対岸の土地が他人の所有に属するときは、当該土地の所有者の承諾を得なければならないことから、正しい答えとなります。
イ 民法221条第1項において「土地の所有者は、その所有地の水を通過させるため、高地又は低地の所有者が設けた工作物を使用することができる。」と規定されていることから、誤りとなります。
ウ 民法222条第1項において「水流地の所有者は、堰せきを設ける必要がある場合には、対岸の土地が他人の所有に属するときであっても、その堰を対岸に付着させて設けることができる。ただし、これによって生じた損害に対して償金を支払わなければならない。」と規定されていることから、正しい答えとなります。
エ 民法213条の2第1項において「土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付(以下この項及び次条第一項において「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。」と規定されていることから、誤りとなります。
オ 民法209条第1項において「土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。一 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕」と規定されていることから、正しい答えとなります。
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